フッ素樹脂について
フッ素樹脂とは、フッ素原子を含むプラスチック原料の総称です。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)をはじめとする9種類の代表的な樹脂があり、
耐熱性、滑り性、非粘着性、耐薬品性、低摩擦性、絶縁性に優れた性質を同時に兼ね備えるプラスチックです。その特性を生かし、食品・化学・半導体・液晶・理化学機器・輸送など多くの業界で幅広く活躍し、現代産業を支えています。
なお、一般的にフッ素樹脂のことを“テフロン™と”いいますが、“テフロン™”とはケマーズ社が製造するフッ素樹脂の商品名になります。

テフロンとは
テフロン™とはケマーズ社が製造するフッ素樹脂PTFE原料の商品名です。
のちに、テフロン™と呼ばれるPTFEは1938年に米国デュポン社のプランケット博士によって発見されました。
プランケット博士は新しい冷媒の研究課程で、四ふっ化エチレン(TFE)ガスを実験用の圧力容器に保存していました。ある日、蓋を開けたところガスは出てこず、容器を切断して調べた結果、内壁から白い粉が出てきました。のちに、この白い粉がPTFEとなります。この時の実験ノートは現在でもデュポン社に保存されています。
第二次世界大戦中は軍用製品をとして利用されていましたが、1945年にデュポン社はPTFEをテフロン(Teflon)™として商標登録し、1946年からは民生用としても販売を開始しました。これにより多くの産業への利用が可能となり現代産業の発展を支えています。
2015年ケマーズ社がデュポン社からの分社・独立し、テフロン™ (Teflon™)の商標もケマーズ社に移管されました。
フッ素樹脂の種類と名称について
フッ素樹脂にはPTFEやPFAをはじめとする9つの品種があります。下記の表は略称と日本語名称になります。
フッ素樹脂の特性について
フッ素樹脂には主に6つの特性があります。
耐熱性、耐寒性、非粘着性、滑り性、耐薬品性、絶縁性、耐候性です。
1つのプラスチック樹脂が多くの特性をもつことは珍しいため、フッ素樹脂は“最後の砦の樹脂”といわれています。
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耐熱性(熱に強い)
PTFEの融点は327℃で、他のプラスチックに比べ優れた耐熱性があり、連続使用温度は260℃になります。高温環境下でも劣化しないため自動車の内部に使われる部品や食品製造工程で必要とされています。
※加工製品によって耐熱温度は変わります。製品をご利用の際はご確認ください。 -
耐寒性(寒さに強い)
PTFEは-253℃という優れた耐寒性があり、フッ素樹脂製品に加工されても-100℃でも使用できる高い耐寒性を保ちます。
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非粘着性(くっつきにくい)
フッ素樹脂はほとんどの物質を固着させない特性があります。
離型性ともいわれ、仮にくっついたとしてもすぐに剥がせる性質があります。粘性の物質も滞留させないことから、食品製造工程や印刷機などの機械部品に採用されています。また非粘着性を生かして洗浄工程を軽減させるメリットもあります。
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滑り性
フッ素樹脂はあらゆる個体の中で最小の摩擦係数をもっています。
摩擦係数が低いため摩擦抵抗がほとんどかかりません。滑ることで製品搬送の傷防止やスムーズに製造工程を進めたい場面で必要とされています。
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耐薬品性(薬品に強い)
フッ素樹脂はほとんどの薬液や溶剤におかされることはありません。
強酸や強アルカリに触れても不純物を起こしにくい性質があるため、特に半導体製造装置に多く採用されています。
薬液容器、配管、チューブ、ウエハーキャリアなど半導体製造装置にはフッ素樹脂製品が欠かせません。
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絶縁性(電気を通しにくい)
フッ素樹脂はプラスチックの中で最高レベルの電気絶縁性を持っています。プラスチックの中でも誘電率、誘電正接が最も小さく周波数や温度にも影響されにくいため、高周波数の用途で多く採用され大容量の高速通信社会に大きく貢献しています。
また、フッ素樹脂製の基板材や電線はフッ素樹脂がもつ耐熱・耐寒性の特性も相まってメンテナンスフリーの製品として重宝されています。
分子構造からみるPTFEの特性について
フッ素樹脂の代表的な原料であるPTFEはその分子構造から様々な特性をもっています。下記はポリエチレン樹脂(PE)とフッ素樹脂(PTFE)の分子構造になります。